ダウン症は、染色体の突然変異で、千人に一人の割合で生まれてきます。母体の年齢が高くなるとともに、ダウン症を始めとする染色体異常をもつ子どもの頻度が高くなります。ダウン症のある人は国内に5万~6万人とされています。遺伝ではなく、誰にでも起こりうる染色体の突然変異によって起こります。筋肉の緊張が低く、知的な発達に遅れがあることが多く、心臓や消化器系など合併症を伴うことも少なくありません。
心身共に成長はゆっくりですが、医療技術が進み、50歳を過ぎても元気な人が多くなっています。しかし、子どもがダウン症と分かると、親は思わぬ事態に、これからどう育てていけばいいのか不安に陥ります。しかし、成長段階ごとに直面する課題や活用できる教育、福祉、医療制度などについて、適切な情報を得られれば、子どもに合う育て方を見つけやすくなります。ダウン症の子を育てた経験者や専門家らによる支援も広がってきています。
誰もが子どもに障害があったとしても、その子どもが幸せに生きていってほしいと考えます。しかし、現実の社会を見ると障害をもって生まれてきた子が、必ずしも幸せな人生を送っているとは限りません。これまでの人間社会は、障害をもった人がそして家族が、もがき苦しむような社会であったのかもしれません。障害をもつ子どもや家族は、子どもが不幸になるのではないかと不安に苛まれます。障害を持つ子どもが生まれても、不安なく育てていける社会であるならば、いのちの選択をしなくても良いのかもしれません。そのためには社会の人々が、障害に対して正しい知識を持ち、障害を持つ人と共に生きる社会の実現を目指すようになれば、障害そのものが障害でなくなっていきます。つまり、“障害をもつ”ではなくて“障害のある”との考え方ができるようになります。
(2016年11月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)