産科医療補償制度の見直し

分娩時の医療事故では、過失の有無の判断が困難な場合が多く、裁判で争われる傾向があり、このような紛争が多いことが産科医不足の理由の一つであるとされ、また産科医不足の改善や産科医療提供体制の確保が、我が国の医療における優先度の高い重要な課題とされていた。このため、産科医療関係者等により無過失補償制度の意義について議論され、平成21年1月に、安心して産科医療を受けられる環境整備の一環として、産科医療補償制度が創設された。本制度は、早期に創設するために限られたデータをもとに設計されたことなどから、遅くとも5年後を目処に、本制度の内容について検証し、補償対象者の範囲、補償水準、保険料の変更、組織体制等について適宜必要な見直しを行うとされている。

 制度見直しに係る検討課題のうち、補償対象範囲、補償水準、掛金の水準、剰余金の使途等については、医学的調査専門委員会の調査の結果を受けて今後議論を行うこととしている。既に原因分析のあり方、調査のあり方、紛争の防止・早期解決に向けた取組み等の議論の結果を取りまとめた報告書もできている。多額の剰余金が発生していることからも、これらの報告をもとに、家族や患者にとって公平となるような対象拡大が図られるべきである。また、医療者側も原因分析の検証結果を真摯に受け止め、再発防止に努めなければならない。

 

(2013年10月18日 朝日新聞)

(吉村 やすのり)

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