出生前診断の意思決定

新型の出生前遺伝学的検査のように、妊婦の血液中にある胎児のDNAを分析する技術は、広く応用され、身近になりつつある。今後、染色体のわずかな欠損や、単一遺伝子の異変から起こる病気まで検査対象が広がる可能性がある。

そもそも出生前診断を受けることは、女性の権利なのか。胎児の「生きる権利」と矛盾しないのか。欧米では、ダウン症児を出産したのは医師が出生前診断を勧めなかったからとして、「適切な検査を受ける権利を侵害された」との裁判もおきている。出生前診断の意思決定は、個人的な決断、親である二人の決断による。しかしその決断は、社会が障害者をどのように受け入れているかに左右される。障害者が生きづらい世の中だと親になる人が感じるのであれば、陽性と判断された時、生むことをためらい、中絶を選択するであろう。

出生前診断の是非を論ずる以前に、障害者が一般の人と同じように学校や職場で当たり前にみられるような社会の実現が必要であろう。

(吉村 やすのり)

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