東京大学の調査によれば、両親の年収の低い世帯ほど子どもの大学進学率が低いことが明らかになっています。四年制大学進学率は、両親の年収1,000万円超なら62%ですが、400万円以下なら31%にすぎません。大学教育まで無償化すべきだという主張の背景にあるのは、収入による教育格差です。大卒の生涯賃金は、高卒より6千万~7千万円高いというデータがあります。両親の所得が子どもの学歴に影響するなら、格差が固定化につながっています。貧因の世代間連鎖が生じています。
教育政策を社会の支え合いと位置づけるなら、税で負担するのが筋です。無償化の最大の壁は財源です。幼児教育・保育をタダにするのにかかる費用は約1.2兆円、大学までだと4兆~5兆円がかかります。しかし、批判を受けやすい増税の議論に真正面から向き合えないところに、無償化議論の難しさがあります。
(2017年5月25日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)