日本の医師数は人口千人あたり2.2人と欧米諸外国に比べると極端に少ない。それと反対に人口千人あたりの病床数は3~4倍多い。つまり医師が少ない割に病院や診察所が多く、集約化できていない状況にある。もう一つの大きな問題点は医師の地域偏在である。わが国においては、どの診療科を名乗っても、どの地域で医療に携わっても自由であるため、医師が大都市に集中しやすい。ドイツでは、診療科や地域ごとの医師数に一定の枠が設けられており、自由度はかなり制限されている。
ここ数年医師不足が問題となり、各大学毎に定員が10~15名増加しており、全国で800名程増加している。このように医師の養成枠を広げても、地域医療に携わる人材を増やすことができないことから、医学部新設が叫ばれるようになった。これまでも地方の医学部においては地域枠を持ってはいるが、医師の偏在の解消にはいたっていない。医学部新設にはいかにして教員の確保をするかなどの数多くの問題があるが、新設を認めるとするならば、一定年限での地元での勤務を条件にした学費支援制度や奨学金制度を設けることが必要となるであろう。
(2013年12月5日 日経新聞)
(吉村 やすのり)