厚生労働省は都道府県に対し、医師をどの程度確保するかという目標と対策を盛り込んだ計画の策定を義務付けます。国際的に見た日本の医師の数は、他の先進国に比べてやや少ない水準にあります。わが国における人口千人あたりの医師数は2.3人です。米国の2.6人やカナダ2.5人と同程度ですが、経済協力開発機構(OECD)の平均の2.8人を下回っています。しかし、日本の場合、医師の配置が地域で偏っている問題がかねてから指摘されています。偏在は2パターンがあり、人口あたりの医師数に地域で差がある場合と、一部の診療科に医師が偏る場合です。
都道府県別に見ると、10万人あたりの医師数で京都府では308人ですが、埼玉県は153人で約2倍の差があります。各都道府県の中でも、地域ごとにみるとさらに大きな格差があります。診療科別では、この20年で外科や産婦人科の医師数がほとんど横ばいですが、麻酔科や精神科、放射線科の医師は1.6倍から1.8倍に増えています。
これら偏在は、必要な医療が特定の地域で受けにくくなる事態を招きます。都内には大学病院が多く、多くの医師が集まります。一方、地方における医師確保は難しくなっています。同様に、同一県下であっても市街地と地方では著しい格差がみられます。大学の地域枠の医師には、都道府県が主体的に派遣方針を決定することも必要になります。
医師には法律で定められた診療科であれば何を目指してもよいという自由標榜の原則があります。需要がなくても特定の診療科の医師が増える傾向が強いのは、労働負荷や訴訟リスクを嫌うケースが多いことが関係しています。最も医師が偏在する原因の一つとして、自由標榜や医師がどこでも自由に開業できる自由開業であることが関係しています。今後はこうした原則も見直すことも必要になってくるかもしれません。ただこれらの原則の見直しには日本医師会などが反発しています。
(2017年10月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)