性同一性障害の患者は、2004年7月施行の性同一性障害特例法により、2人以上の専門医の診断の上で、20歳以上、未成年の子がいない、生殖機能を欠く、変更したい性別の性器に近い外観を備えているなどの条件を満たせば、家裁で性別の変更が認められるようになりました。最高裁の統計によれば、特例法で性別の変更が認められた人は2016年までに6,906人に上ります。念園お増え続け、ここ数年は毎年800人以上で推移しています。
しかし、同法には再変更を定めた規定がありません。法律ではそもそも再変更を想定していません。日本では性別適合手術が性別変更の要件になっており、ためらいがある人はここでブレーキがかかっています。性別の変更はもちろん自己責任ですが、変更後の生活になじめず強く後悔することもあると思われます。本人が限界だと感じているのであれば、自己責任と切って捨てるのは酷なように思えます。特例法の施行直後に比べ、性別は容易に変更できる環境にあります。今後、同じ悩みを抱える人は増えてくると思われます。性別をたびたび変えることは望ましくありませんが、例外的に後戻りできる道も必要になるかもしれません。
(2017年10月30日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)