待機児童問題―Ⅴ

幼稚園の活用
 少子化や共働き世帯の増加に伴い、幼稚園の利用者は年々減ってきています。1978年のピーク時に250万人近くいた園児が、2017年度には約127万人と半数程度になってきています。2016年度の幼稚園の定員約200万に対し、通っている子どもは3分の2に過ぎません。逆に保育施設の利用者は増え続けており、今年4月時点で過去最高の約255万人に達しています。政府は、新たな待機児童対策で、幼稚園の2歳児預かりを後押ししています。原則35歳児を預かる幼稚園を保育の受け皿にする狙いです。
 2006年度に導入された幼稚園と保育園を一体化した認定こども園の普及も進んでいません。内閣府によれば、今年4月時点の認定こども園は5,081園で、1年間で1,080園も増えています。しかし、幼稚園から転じたのはわずかです。幼稚園は独自の建学の精神を大切にしながら、保護者に行事や運営などに参加してもらうところが多くなっています。預かってくれればいいという保護者が多い保育園とは異なった文化もあります。都市部では今も幼稚園のニーズが一定数あります。行政が認可保育施設に求める11時間以上を下回る開園時間を認めたり、3歳未満が対象の小規模保育と連携したりして、親や幼稚園側のニーズに合わせた柔軟な預かり方を考えていくべきです。

(2017年11月8日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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