嫡出否認

 現行の民法では、第774条により、生まれた子との父子関係を否定する嫡出否認は夫だけに認められています。民法772条は、妻が婚姻中に妊娠した子は夫の子(嫡出子)と推定すると規定し、夫だけがこれを覆す嫡出否認の訴えを起こせると定めています。法的な父子関係を早く確定させ、子の身分が不安定にならないようにするとの考え方によっています。この規定は違憲として、神戸市の60代女性らが国に損害賠償を求め裁判をおこしています。
 訴状などによると、原告の女性は夫から顔を殴られるなどの暴力に苦しみ、1982年に別居しました。離婚成立前に別の男性との間に娘が生まれ、離婚後の1986年に男性の子として出生届を出しましたが、受理されませんでした。嫡出否認には元夫の意思を確認する必要があり、暴力を恐れて関係を断っていた女性は断念してしまいました。元夫の死後、法的手続きが進み、娘と孫は昨年、戸籍を作成することができましたが、娘は約30年間も無戸籍状態が続いていました。この嫡出否認の規定の違憲性を問われるのは初めてです。神戸地裁の判断が注目されます。

 

(2017年11月27日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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