日本の医療費は膨らんでいます。厚生労働省によると、2016年度の概算医療費は41兆3千億円と前年度から0.4%減ったものの増加基調が続いています。要因は人口の高齢化だけではなく、医療技術の高度化、薬価の高騰などがあげられます。医療機器と薬の国内市場は拡大しています。医療機器は2015年には約2兆7,500億円と2006年から約22%増え、医薬品は同約36%増の約10兆6,900億円となっています。医療機器ではロボット手術や高機能のデバイス、薬ではがん免疫薬オプジーボなどの高額薬の登場によります。
価格高騰は世界的な傾向です。各国は抑制策に知恵を絞っており、機器では、欧米でリサイクル品の市場が年率10%以上の伸び率で拡大しています。薬では、米国では民間保険者、欧州では政府機関などが使用する薬に制限をかけるなどしています。分解洗浄したリサイクル品を、病院は新品よりも安く購入できるようになります。医薬品についても、患者に投与されず余って捨てていたものを有効活用することができます。医療現場の節約が浸透すれば、高騰する国の医療費を約1,100億円削減できるという指摘もあります。
(2017年11月20日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)