幼児教育の無償化

 幼児教育・保育無償化では、2020年度までに①35歳の全ての子どもの幼稚園・保育園費用を無償化②02歳児は低所得世帯を対象に無償化するとしています。自由に料金設定できる一部の幼稚園や認可外保育施設は、助成に上限を設けるよう求めています。また、02歳児は、住民税非課税世帯を対象に進めるべきだとしています。幼児教育の無償化は、人づくりの観点からも、そうした教育を収入に関係なく受けられるようにする点でも意義があります。人口減少で女性労働力が期待される中、子育てを支えるシステムの一つとしても重要です。
 日本の幼児教育は、海外に比べて私的負担が大きく、公的支出は少ない状況にあります。保護者の負担を軽減することは悪い事ではありません。しかし、現在の日本の幼児教育・保育の現場から見れば、無償化より先にやるべきことが山積しているとの意見もあります。その一つが待機児童問題です。無償化になっても、保育所に入れなければ意味がありません。待機児童を抱えて仕事を続けれられなくなるリスクは、産み控えを招き、少子化を加速させる可能性があります。保育士不足も深刻です。安心して子どもを預けなければ、女性の就労抑制につながります。保護者の保育料負担がなくなれば、より長時間の保育を希望する可能性も出てきます。保育のニーズが掘り起こされ、さらに待機児童が増えたり、保育士不足が加速したりすることを懸念する声もあります。
 幼児教育・保育の無償化と待機児童問題対策の優先順位が議論されていますが、両方必要で、車の両輪として進めるべきです。無償化は需要を掘り起こすとの批判がありますが、隠れているだけでニーズはあります。人材育成の観点から幼児教育の重要性を社会全体で認識し、幼児教育がどうあるべきか、全体的な議論をしていく必要があります。そもそも日本では、子どもにかける公的な資金が少なく、少子化を加速し、将来不安を招いています。国が子どもに大胆にお金をかけるようになれば、数年で社会が見違えるほど変わるはずです。

(吉村 やすのり)

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