長期的な視点に立てば、次世代の教育に投資することは、将来の我々世代を支える次世代の生産性上昇を生み、両世代に恩恵をもたらすことになります。家計の経済状況により子どもの教育機会が失われる最も深刻なケースは、貧困に伴うものです。子どもの貧困による社会的損失は約40兆円に及ぶとされています。したがって親の低所得を理由に教育期間の短い子どもに対して、政府が公的教育を廉価で供給したり奨学金などで教育を補助したりすることは、公平性の観点からも支持されます。
米国における低所得家庭の3~4歳児への無償の保育・幼児教育プログラム提供は、非認知能力の向上を通して収入増や犯罪抑制など長期的な効果があったことが示されています。保育所利用は社会的に恵まれない子どもの攻撃性や多動性を低下させ、そうした家庭の母親の幸福度を改善させると考えられています。教育を社会的な投資とみなすならば、短期的な対応だけで済ませず、長期的な視点でとらえる枠組みを構築すべきです。
(2017年12月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)