子育てへの公的支出

 わが国の子育て支援の予算がGDPに占める割合は、1.31%に過ぎません。出生率を上昇させたフランスやスウェーデン、英国の2分の1から3分の1の水準にとどまっています。教育への国や自治体の支出も少なく、家計の負担の重さが少子化の一因と指摘されてきました。今回の教育の無償化で負担軽減を図る狙いは大いに評価できます。
 一方、政策の目玉である35歳児の幼児教育・保育の無償化には、待機児童の解消に悪影響を与える懸念もあります。認可保育所に入れない待機児童は今春で26,000人に上り、都市部では深刻化しています。2020年度までに32万人分の保育施設を整備しようとしていますが、無償化が進めば、保育需要が掘り起こされ、整備が追いつかない恐れがあることが指摘されています。
 幼児教育や保育に先進国が注力する背景には、質の高い教育・保育を受けると将来の所得が高まるなど、投資効果の大きさが実証研究で示されたことに起因します。無償化も必要なことではありますが、今後は保育士の待遇改善、病児保育、夜間保育などの保育の質の改善についても検討されるべきです。

(2017年12月15日 読売新聞)
(吉村 やすのり)

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