政府は2018年度の診療報酬と介護報酬の改定率を決めました。診療報酬は、全体で1.19%引き下げますが、医師や薬剤師などの技術料にあたる本体部分は0.55%引き上げます。本体の引き上げ幅は、前回16年度の0.49%を上回っています。医薬品など薬価部分を1.74%引き下げることで全体の改定率をマイナスとする一方、捻出した財源で本体の6回連続プラス改定につなげました。診療報酬全体のマイナス改定は2回連続となります。介護保険サービスの公定価格である介護報酬は0.54%引き上げます。介護報酬は2012年度以来6年ぶりのプラス改定となります。
財務省はとしては、財政健全化の観点から大幅なマイナス改定を主張し、本体にも切り込む姿勢でした。しかし、日本医師会は、政府が産業界に賃上げを要請していることを理由に、プラス改定を強く求めていました。近年、病院経営は悪化傾向にあります。地方の医師不足や病院勤務医の過重労働も大きな問題となっています。全体の下げ幅を拡大しつつ、本体の微増を確保したのは、財政健全化と医療体制の安定の双方に配慮した妥当な判断と思われます。
高齢社会において、退院支援を担う回復期向け病床や在宅医療の報酬を手厚くすることは必要です。介護報酬は3年ごとに見直されますが、前回は2.27%引き下げられました。プラス改定は6年ぶりです。介護における人手不足が深刻な現状を考えれば、大幅な処遇改善が欠かせません。政府が揚げる介護離職ゼロを実現するためにも、プラス改定は必要な措置だと言えます。
今回の引き上げで国費負担は増えることになります。診療報酬本体分で約600億円、介護報酬で約150億円に及びます。また、医療機関での患者の窓口負担や介護サービス利用者の自己負担も引き上げになるほか、40歳以上が支払う介護保険料なども増えることになります。
(2017年12月16日 読売新聞)
(吉村 やすのり)