予期せぬ妊娠

 富山県内の中学校で、医師が現実的な性教育の知識を伝える出前授業が行われています。教壇に立っているのは、富山市で女性クリニックを開業している産婦人科医の種部恭子医師です。富山県は性教育の先進県の一つです。富山市でも20年前から、市内全中学校に産婦人科医らが出向いて性教育の授業をしています。富山県の2016年度の10代の人工妊娠中絶率は全国で3番目の低さです。地域の医師が講師になることで、妊娠や感染症で悩んだ時にあの先生にと、子どもたちが病院を訪れやすくする意味もあるといいます。
 中学生に妊娠の相手は、ネットで知り合った男性や監護・指導的立場を利用した大人が多いと感じます。父親や兄弟から性虐待を受けているケースもあります。家庭内暴力がある家庭の子どもは、ばれたらお母さんがお父さんに怒られると気遣ってしまい、妊娠を打ち明けられないことがあります。親に過剰に期待された優等生が、苦しい現実から逃れたくてSNSでつながった相手と会い、妊娠に至ってしまうこともあります。こうした大人社会のひずみの中で妊娠した女子生徒への支援は乏しく、体よく学校から追い出されてしまっているのが現状です。予期せぬ妊娠は、産み捨てのような赤ちゃんの虐待死を招きかねません。

(2017年12月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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