今や大学は、高度の研究活動を志向するのか、学生の教育の充実を図るのか、岐路に立たされています。海外を視野に入れた研究拠点の確立か、地域のニーズにあった人材育成かに進むかです。朝日新聞と河合塾が今夏に共同で実施した調査「ひらく日本の大学」によれば、世界的な研究教育拠点としての確立を目指す大学よりも、地域や社会で卒業後に求められる即戦力として活躍できる職業能力を育てる大学が急増しています。学生の人格形成や必要な教養を身につけさせることに注力する大学が増えています。
職業能力育成重視のグループの大学数が最も多く、全体の46%にのぼっています。グループの62%は地方にあり、入学定員300人未満の小規模な大学が46%を占めています。教養・人格形成重視を選んだグループは、学生数が最も多く91万人で、大学数でも全体の36%を占めています。国立大学より中規模の私立大学や公立大学が多く、多数の女子大学も含まれます。学術育成重視を選んだグループは、大学数全体の10%で、私立に比べると国公立が多くなっています。世界的研究・教育拠点と回答したグループには、国立の旧帝国大学や有名私立大学が含まれています。このグループの大学の63%が東京や大阪、愛知など大都市圏にあります。
(2017年12月18日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)