米IBMが開発したAI「ワトソン」は、世界中から集めた膨大なデータを学習して治療法を導き出すことができ、医療を大きく変える可能性を秘めています。患者の遺伝情報を集めて、症状とともにワトソンに解析をさせることができます。その結果にワトソンが蓄えたがんの専門知識を掛け合わせて、病名や治療法を提案します。製薬業界では新薬の開発にAIが活用され始めています。膨大な化学物質データベースから、狙った効き目を発揮する物質の組み合わせを探り出すことで、薬の開発期間や費用を大幅に抑えることができます。
しかし、最終的な診断をするのは医師の役割です。ワトソンが提案した病名が正しいのかどうかを再検討し、合併症の有無や年齢などを考慮してワトソンが示した治療法を採用するかどうかを決めます。アメリカではAIの提案をもとに医師が診断を行う病院があります。日本では、厳しい法規制など乗り越えなければならない壁はありますが、ワトソンは医師が2週間かけて導いた結論を10分で出すことができます。医療はAIによって飛躍的な進歩が期待されます。がんなどの病気の早期発見・治療に貢献するだけではなく、医療費削減も可能になります。
(2018年1月1日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)