1966年はひのえうまの年であり、戦後最低の合計特殊出生率1.58となりましたが、その後第2次ベビーブームが起こり、出生率2前後まで回復いたしました。これが団塊ジュニア世代です。その後出生率は低下しつづけ、1989年には1966年を下回り、1.57ショックといわれました。平成に入っても第3次べビーブームは起こらず、団塊ジュニア世代は減少したままです。仮に出生率が上がったとしても、今後数十年は人口が減り続けます。少子化の要因は複雑であり、考えられる限りの対策を長期的に実行し続けなければ効果が出ません。
地方では子育てがしやすいのですが、働き口がありません。東京は仕事を見つけやすい半面、子育てに不向きです。この不均衡が、日本の子どもを減らし続けています。首都圏に全人口の3割近くが集まる一方、東京都の合計特殊出生率は全国最低で婚姻率も低くなっています。地方から人を吸い上げ、超少子化の渦に巻き込んでいます。
人口減少の問題は、単に人が減ったという事実だけではありません。この国と社会の存在そのものに疑問符を投げかけます。大きな政策転換が必須ですが、同時に家族と地域社会、都市と地方、女性と男性のあり方を変えなければ、この国は持続可能性を失ってしまいます。そして、そのツケを負うのは、若者やこれから生まれる世代です。
(2017年12月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)