わが国の科学技術の競争力の低下

 日本の科学技術の競争力が低下しています。21世紀も20年近くが経過し、毎年のように日本人・日系人がノーベル賞を受賞する時代を迎えました。確かに、ノーベル賞受賞の原動力となった2030年前の日本の科学は活力に満ちていました。しかし、日本のみが相対的な地盤沈下を起こしています。この十数年、科学技術関連予算は伸び悩み、科学の主体を担う国立大学の運営費交付金は減り続けました。他方で中国、韓国の科学技術予算は10倍、5倍となり、欧米先進国も1.5倍となっています。
 現状を変える特効薬は、優秀な若手研究者の国際化を強力に進めることです。高い研究能力を持ち、自立性とスマートリスクを取る勇気を持つ国際人の育成が必要です。もう一つは、人材育成も含めた戦略的かつ組織的な産学連携の推進です。社会のニーズを体感できる研究者、研究のわかる企業人材を組織的に育てることが大切です。理系博士号を持った企業トップを生み出し、産業界と大学の連携を深いものにすることが必要です。大学と産業界が手を携えて、今こそ科学技術で日本の未来を描く時です。

(2018年1月8日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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