在宅みとりを考える―Ⅲ

在宅医療のコスト
 積極的な延命治療よりも、自宅で穏やかに療養して死を迎えるためには、家族の支援が必要になります。しかし、結果として、治療や検査が中心の病院より医療費は一般的に低くなります。在宅医療は身体的に通院が難しくなった場合に利用できます。一方、入院すれば医療費は少なくとも月30万~50万円ほど、手厚いケアを受けられる緩和ケア病棟なら月100万~150万円ほどかかります。在宅医療を普及させることで、公的な医療費を減らすことはできます。
 在宅のみとりでは、費用は入院より安くなっても、家族による無償のケアが補っています。在宅みとりの場合、家族の担う役割は大変大きなものがあります。単身や夫婦だけの高齢者世帯が増え、介護できる家族が減るなかで在宅ケアを進めることは、今後難しくなると思われます。つまり、家族によるケアを前提としたコストのかからない安い在宅医療は、いずれ成り立たなくなると思われます。結果的に公的な医療・介護サービスがより多く必要になり、逆に費用がかさんでしまいます。

 

(2018年1月26日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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