VSEDとは、Voluntary Stopping of Eating and Drinkingの略で、患者が自らの意思で飲食せず、死を早めようとする行為のことをいいます。日本緩和医療学会らの専門医に対する実態調査によれば、終末期医療に携わる医師の約3割が、VSEDに直面した経験があると答えています。VSEDは苦痛から逃れたいとの思いが原因とみられますが、どこまで患者の意思を尊重するか、欧米に比べ日本では議論が進んでいない状況にあります。
VSEDという言葉を知っていると答えた医師は53%でした。このうち回答者の32%がVSEDの終末期患者を実際に診たことがあったとしています。米国看護師協会は、2017年に患者にはVSEDの権利があり、その意思を尊重すべきだとの声明を発表しています。欧米では医師がVSEDを容認すべきか、安楽死とともに倫理的な観点などから議論されています。しかし、医師がVSEDを容認した場合、違法性があるかなど結論は出ていません。日本ではVSEDについて医療界でもあまり認識されておらず、議論が進んでいません。日本でも患者の死ぬ権利にどう向き合い、何ができるか議論を重ねる必要があります。
(2018年1月30日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)