厚生労働省は、受動喫煙対策を事業者らに義務付ける健康増進法改正案の素案を公表しました。普及が進む加熱式たばこは、受動喫煙による健康影響は明らかではありませんが、煙に有害物質が含まれるとして規制対象としています。紙巻たばこを含め飲食店は原則禁煙としつつ、既存の小規模店は分煙などと表示すれば喫煙を認めるとしています。現行法は受動喫煙対策が努力義務にとどまっています。直近の五輪開催国は罰則を伴う法規制を導入しており、2020年東京五輪・パラリンピックに向けて日本も対策を強化します。飲食店の例外規定は、個人や中小企業が経営する既存の小規模店は、喫煙、分煙と表示すれば喫煙を可能としています。
世界186カ国の中で、WHOが定める8カ所全てを法的に禁煙とし、最高ランクの評価に分類されるのは英国やカナダ、ロシアなど55カ国です。州法で受動喫煙対策を定める米国は、ニューヨーク州が屋内全面禁煙としており、喫煙室の設置も認めていません。フランスは学校を敷地内禁煙とし、医療施設や大学、運動施設では屋内禁煙で喫煙室の設置も不可です。行政機関や飲食店などは原則屋内禁煙としつつ喫煙室を設置できます。多くの先進国や五輪開催国は、屋内を全面禁煙とし、喫煙室の設置もできません。今回の厚生労働省案は国際基準とはほど遠く、規制の甘さが問題視されそうです。東京都も国の改正案と整合性を取るため、内容を修正する方針です。せめてオリンピックが開催される東京では、屋内禁煙にすべきです。
(2018年1月31日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)