ヒトは、がん細胞の増殖を防ぐ抑制遺伝子を父親と母親から一つずつ受け継いでいます。この双方に変異が起きるとがんになります。親から変異を受け継いでいる人は生まれつき一つに変異があり、受け継いでいない人よりがんになる確率が高くなります。遺伝子の変異を受け継いでいるかを調べ、変異があれば定期的に検査して、がんを早期に見つけて治療を受けることができます。
網膜芽細胞腫は、両目にある場合はほぼ遺伝性で、片目の場合も10~15%が遺伝性です。子どもに引き継ぐ可能性があるかを調べる遺伝子検査は、公的医療保険が適用されています。生まれた直後から眼底検査をして早期発見して治療することができます。遺伝性がんには、ほかに家族性大腸ポリポーシス(家族性大腸腺腫症)やリンチ症候群(遺伝性非ポリポーシス大腸がん)があります。遺伝性乳がん・卵巣がんの患者も多くみられます。国内で約7万6千人いる乳がん患者の約5%を占めています。
(2018年2月2日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)