閉経を挟んだ前後数年の時期を更年期といいます。50歳前後に閉経する人が大部分ですが、個人差があります。閉経期は2つに大別されます。閉経に向け揺れ動きながら、女性ホルモンであるエストロゲンが減る閉経移行期と、エストロゲンがほぼ出なくなり長期間経過した閉経後です。
閉経移行期には、いわゆる更年期症状が出ます。血管をコントロールする自律神経の失調による、ほてりやのぼせなどのホットフラッシュ、発汗といった症状です。また肩がこるとか疲れやすいといった身体症状が出ることもあります。イライラしたり感情的に不安定になったり、眠れない、ぐっすり眠った気がしないなどの不眠症状、さらにうつ症状が重くなる人もいます。
更年期の後期である閉経後には、エストロゲンがほぼ出なくなってしまいます。エストロゲンにはコレステロールを減らす仕組みがあるため、脂質異常症が起きやすくなり、それに伴う動脈硬化性の心血管疾患、例えば狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などのリスクが高まります。また高血圧や糖尿病などのリスクも増加します。またエストロゲンの欠乏により、閉経後には骨粗しょう症から骨折のリスクが高まり、認知機能が低下して認知障害を起こしやすいといったことが知られています。
更年期障害は、心理・社会的な因子も大きな影響を及ぼしています。患者の訴えをじっくり聴くことも大切です。加えて生活習慣の改善も指導します。薬物治療は、ホルモン補充療法が中心になります。閉経後にもホルモン補充療法を続けることで動脈硬化や骨粗しょう症、認知機能障害といった慢性疾患の予防も期待できます。
(2018年2月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)