国立大学が国から受け取る運営費交付金は、削減が続いています。2016年度は1法人あたりの平均でみると121億円と、2004年度と比べて1割も減っています。私立大学への補助金も、2016年度は1校あたり5億2千万円と、同じく1割減でした。大学が財源の多様化を図る中で、寄付金は柱の一つに位置付けられています。国も大学などに寄付した場合に、税制面で優遇措置を講じるなど寄付をしやすい環境づくりを進めています。しかし、依然と大学の収益や収入の全体に占める割合は小さく、国立も私立も2%前後で横ばいの傾向にあります。米国のトップ大学では、ハーバード大学やスタンフォード大学への寄付は不動産や株式なども含めて年1千億円を超えています。
18歳人口の減少などで大学の経営環境が厳しくなる中、大学が寄付金集めに力を入れています。トップが自ら募金に走り、寄付者が使い道を細かく指定できる仕組みを採り入れるなど、新たな手法を次々に繰り出しています。わが国には大学は卒業するところであり、大学を育てていこうとする文化がありません。まずは寄付への機運を醸成することが重要です。寄付する人の意思を使途に反映することも大切です。寄付後も関係を維持していくことが重要です。
(2018年2月7日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)