着床前スクリーニング検査について

着床する前の胚の一部の割球を取出し、その病気遺伝子の有無を調べ、正常な胚を子宮内に戻すのを着床前遺伝子診断(Pre-implantation Genetic Diagnosis :PGD)という。一方、胚の染色体の数の異常を調べたり、男女の産み分けなどをスクリーニングしたりすることを着床前スクリーニング検査(Pre-implantation Genetic Screening: PGS)という。これまで日本産科婦人科学会は重篤な遺伝性疾患に限りPGDを認めてきたが、PGSを許可していない。

 このスペシャル論点のテーマは、わが国でPGSが許されるかどうかということである。三者三様の考え方をしているが、PGSの倫理上の問題以前のこととして、医学的にPGSが有益であるかどうかの検証が大切なのではないかと思う。流産を繰り返す女性や高齢の女性において、染色体の異数性を検査するPGSが科学的に意義があるかどうかの検討はなされても良いのではないだろうか?わが国にはそのような研究はなされていない。その際には前向きの臨床研究が大切となる。大谷先生がPGSの有効性を示されているデータでは、研究者や国民は納得しないであろう。

(2014年1月10日 読売新聞)

(吉村 やすのり)

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