輸血された患者がHIVに感染した事件が去年夏におこった。献血された血液の中にHIVが混入していたことになる。献血時にHIV検査が施行され、陰性の血液だけが輸血に使用されるが、HIV感染の初期にはウィルス量が少なく、検査してもわからない、いわゆる空白期間(window period)が存在する。これまでは、20人分の血液をまとめてその一部を検査していた。感染者がいても、その血液が希釈されてしまうため、検出されないことがあった。現在では1人ずつ個別に検査がなされるようになり、精度は良くなっている。
以前、米国で非配偶者間人工授精(AID)で使用された精液にHIVが混入しており、生まれた子どもがHIVに感染した事件がおきた。そのため、現在ではドナーの精液として新鮮精液を使用せず、凍結精液のみを用いている。ドナーはHIV検査を行い、陰性を確認し、精液を採取し、凍結保存しておく。そして6ヶ月後に再度HIV検査を行い、陰性を確認された精液のみを、AIDとして使用することになっている。精液の場合は凍結が可能であるが、輸血の場合は凍結ができないため、HIV感染を完全防止することは困難である。ウィルス量が少なければ検出できないことがあるからである。
(2014年1月9日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)