日本人の中途失明の原因として最も多いのが緑内障です。緑内障は眼圧によって視神経が傷み、視野がだんだん欠けていきます。眼圧は目の中の水分である房水によって調整され、眼球の形を保つ働きがあります。しかし、房水が目の外に排出されにくくなるなどして、流れが滞ると眼圧が高くなり、視神経が圧迫されてしまいます。視神経は目の中の網膜に届いた光の情報を脳に伝えています。眼球の奥で視神経が集まり、折れ曲がって束になっている部分である視神経乳頭の中央部には、陥凹という少しくぼんだ形があり、緑内障患者では視神経の損傷によってくぼみが大きくなってしまいます。
視神経が傷つくと、視神経につながる網膜の神経の層も傷み、薄くなっています。眼底検査で、陥凹や網膜の神経の層の状態を確認し、緑内障の疑いと診断されます。視神経の損傷が進んでいると確認できれば前視野緑内障と判断され、治療に移ります。緑内障は患者本人が症状に気づきにくく、視野の異常を自覚するのは症状が進行してからで、その段階から治療すると手遅れになることがあります。早期の発見と治療は、発症や進行を遅らせることができます。
(2018年3月12日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)