高度プロフェッショナル制度とは、高度な専門知識を持ち、一定の年収がある働き手を労働時間規制から外す制度をいいます。略して「高プロ」と呼ばれます。労働時間と賃金の関係が切れた制度で、対象者は残業や深夜・休日労働をしても割増賃金が払われません。第1次安倍政権が2007年に導入を目指したホワイトカラーエグゼンプションと同じです。今の労働時間規制では、上級の管理職は管理監督者として扱われ、規制が緩められています。経営者にほぼ近い状態で働いていると認められているためです。高プロは、経営者に近いとは限らない労働者を規制から外すという意味で全く新しい制度です。
高プロを適用できる仕事は省令で具体的に定めることになっています。現段階では金融商品の開発、ディーリング業務、アナリスト、コンサルタント、研究開発業務の5種類が考えられています。高プロには年収1,075万円以上という要件があります。今の法案では、高プロが適用される人に上司がノルマを課したり、仕事の仕方を指示したりすることは禁止されていません。対象業務を省令で定めること以外にしばりはありません。しかし、省令は国会での議論を経ずに変えられるので、対象がどんどん拡大していく可能性があります。
仕事の量を自分で決める権限がないという点で、裁量労働制と高プロは共通しています。仕事の量の決定権がないと、際限のないノルマを課せられ、それに応えるために過重労働が起きる可能性があります。また、業績目標を自分でコントロールできない限り、過剰な労働をしてしまい、長時間労働が発生することも考えられます。いずれにしても、裁量労働制でも高プロでも働き手が労働時間を管理することになります。
(2018年3月12日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)