訪日外国人観光客が増えていますが、急病になった外国人が病院などで治療を受けた後に医療費を支払わないケースが多発しています。厚生労働省の調査によれば、外国人患者を受け入れたことのある医療機関のうち、その3割が治療費の不払いを経験しています。脳梗塞や急性大動脈解離などの事例では、260万~500万円超に上るケースも見られています。不払いの原因は、旅行保険に加入する外国人が少ないことが関係しています。欧州などでは保険加入をビザ取得の条件にする国も多いのですが、日本は事実上未対応です。
外国人の医療を巡る問題への対処は道半ばです。対策が厳しくなりすぎれば、訪日客増にブレーキがかかってしまいます。観光客受け入れ促進と、受け入れ側のトラブル回避との両立が難しい政策課題になりつつあり、国や自治体が一体となって解決策を考えることが必要です。
(2018年3月23日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)