朝日新聞社とベネッセ教育総合研究所が、学校教育に対する保護者の意識調査を実施しています。全国の公立小中学校の保護者7,400人に聞いたところ、教育格差について、当然だ、やむをえないと答えた人は62.3%に達しています。一方、子どもの通う学校の満足度は83.8%で、過去最高となっています。一方、問題だと回答した人は、前回の39.1%から34.3%に減少しています。今後の日本社会において貧富の差が拡大すると考えている人は85.0%にも及び、多くの保護者は格差が拡大すると考えています。
経済的に豊かな家庭の子どもほどよりよい教育を受けられるのは当然だ、やむをえないと考えている保護者が、多数派を占めています。誰にも機会が平等に開かれた社会の実現は、明治以来、日本社会が追求してきたテーマです。しかし、近年メディアなどで子どもの貧困が取り上げられるようになり、この貧困の再発見は、皮肉にも「やむをえない」という諦めを広めたのかもしれません。教育予算においても、所得の低い家庭の子に手厚くより、全員に等しくという政策が支持されています。
格差を容認する人は、経済的にゆとりがあり、都市部に住む保護者に多いと思われます。こうした保護者の子どもが、私立中学に進学する可能性が高いことが影響していると思われます。経済状況が悪化し、企業の採用が厳しくなれば、より格差が顕在化してきます。格差を当然だとする人が1割近くもいることが気がかりですが、一方で格差を問題と考える人が3人に1人いることは救いです。教育格差による社会の分断は許されません。
(2018年4月5日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)