高齢者の脂質異常

LDLは増えすぎると動脈硬化の原因になり、心筋梗塞などのリスクが高まります。コレステロールが高い70~89歳の男性が心筋梗塞などの冠動脈疾患で亡くなるリスクは、低い人の2.8倍にも達しています。一般的にはスタチンという種類の薬でLDLを下げるのが治療の柱となっています。しかし、75歳以上で過去に冠動脈疾患を起こしたことのない人では、スタチンをのんでも予防に役立つという十分なデータがありません。日本人の冠動脈疾患は、脂質異常よりも喫煙や高血圧のほうが原因となりやすいとされ、禁煙や高血圧の治療をより重視しています。
コレステロールは、細胞やホルモンの材料にもなる栄養成分で、体に欠かせない物質です。脂質異常症の治療では、一般にLDLを下げる目的で摂取エネルギーの制限がすすめられますが、高齢者では、栄養不足がもとで心身の活力が落ちるフレイルに陥ってしまう恐れが出てきます。治療中でも、たんぱく質などはしっかり取ることがすすめられています。90歳や100歳といった超高齢者を含む健康な高齢者でみると、年齢が高いほどコレステロールの平均値が低くなっています。在宅医療を受けている認知症の女性についての調査によれば、脂質異常症に該当する人の方が、そうでない人より日常生活を自分でできる度合いが高かったとされています。値が高い人の方が栄養状態が良く、自立度につながっている可能性があります。

(2018年4月4日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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