妊娠高血圧腎症の予防法―Ⅰ

アスピリンの適応症例
妊娠高血圧症候群の中でも、特に妊娠高血圧腎症(preeclampsia)は母子共に予後不良な周産期疾患です。全世界で毎年50万例の胎児・新生児死亡ならびに7万例の母体死亡の原因となっています。重症妊娠高血圧腎症の治療法として分娩以外の根治治療がないため、予防法が現時点では最も重要となります。わが国では妊娠高血圧腎症のハイリスク症例には、妊娠中の食事指導(塩分量制限や適切な摂取カロリー、栄養のバランスなど)を行ないつつ、注意深い妊婦健診を行なっているのが現状です。
欧米ではハイリスク症例に対して、妊娠初期から低用量アスピリンを内服させ、妊娠高血圧腎症の発症予防を行なう事が推奨されています。国際妊娠高血圧学会(ISSHP)でも、2017年の治療管理指針でハイリスク症例に対する症例に対して、できれば妊娠16週以前から低用量アスピリン療法を始めることを推奨しています。妊娠高血圧腎症のハイリスク症に妊娠11~13週6日から36週までアスピリン(150㎎/日、毎晩)を内服させることにより、妊娠37週未満の妊娠高血圧腎症の発症リスクを低下させたという報告もみられます。

(平成30年4月1日 日産婦医会報)
(吉村 やすのり)

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