ペンドレッド症候群とは、先天性難聴と10歳以後に発生する甲状腺腫を合併する常染色体劣性の遺伝性疾患です。先天性あるいは小児期から両側性高度感音性難聴を示します。国内には4,000人の患者がいると推定されています。慶應義塾大学医学部の岡野栄之教授らは、ペンドレッド症候群の患者の血液から作ったiPS細胞を使って病気の状態の細胞を作製しました。これを使って複数の薬から病気の進行を抑える候補を探したところ、免疫抑制剤ラパマイシンが効くことを確認しています。
iPS細胞を使った創薬は、心臓の筋肉や神経などの組織を作って患者に移植し、病気や怪我を治療する再生医療とともに、iPS細胞の有力な活用方法として期待されています。病気の進行を止める効果があるほか、他の内耳性難聴に治療効果を持つ可能性があります。5月にも慶應義塾大学病院で医師主導の治験を始める予定です。
(2018年4月24日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)