日本の出生率は、終戦直後に4を超え、第1次ベビーブーム(1947~49年)が起きました。その後低下し、1961年には2を下回りました。第1次ブームの世代が出産適齢期を迎えた1971~74年には第2次ブームが来て、一時は2を上回るまで持ち直しましたが、再び低下に転じました。平成が始まった1989年は、1.57ショックと言われました。出生率がそれまでの最低だった1966年のひのえうまの1.58を下回りました。しかし、出生率は1991年以降もじわじわと下がり続け、第3次ブームが来ると予想されていた2000年頃になっても上向きませんでした。
平成になってからの長期不況に苦しんだ企業は、規制が緩和された非正規社員に飛びつき、新卒採用を凍結する企業も続出しました。正社員になれなかった多くの若者が、家庭を持つ余裕を持てなくなってしまいました。出生率が1.26にまで低下した2005年、政府は少子化担当を初めて専任閣僚として置き、対策を加速させようとしました。安倍内閣は、50年後も人口1億人を維持するとしています。そのためには2025年までに出生率を1.8にするとも述べています。しかし、今後10年で、希望出生率1.8の達成は望めそうもありません。出生率が1.8を超えている先進国は、スウェーデンやフランスなど少なくありません。これらの国の多くには、日本よりも税金が高く、児童手当などの子育て支援策も手厚いという共通項があります。
(2018年6月10日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)