通所国会が始まり、平成最後の施政方針演説を拝聴しました。急速に進む少子高齢化に対して、全世代型社会保障制度への転換を強調されています。わが国の持続的な成長にとって最大の課題は、少子高齢化です。平成の30年間で、出生率は1.57から1.26まで落ち込み、逆に、高齢化率は10%から30%へと上昇しています。しかし、出生率は平成20年以降、さまざまな少子化対策により、1.43まで微増していますが、生殖年齢にある女性の減少もあり、出生数は94万人まで低下し、今後も増加は望めそうにもありません。
世界で最も速いスピードで少子高齢化が進むわが国にあって、もはや、これまでの政策では対応できない、次元の異なる抜本的改革を伴う政策が必要となります。10月から3歳から5歳まで全ての子どもたちの幼児教育が無償化となります。小学校・中学校9年間の普通教育無償化以来、実に70年ぶりの大改革です。また、今年度も17万人の保育の受け皿が整備されることにより、1~2年度には待機児童ゼロの目標は達成されると思われます。さらに保育士の皆さんの更なる処遇改善を行うと同時に潜在保育士の動員、自治体の裁量を拡大するなどにより、学童保育の充実が進められると思います。
また、来年4月から、公立高校だけでなく、私立高校も実質無償化が実現されます。さらに高等教育も無償化されます。生活費をカバーするために十分な給付型奨学金が支給されるようになり、家庭の経済事情にかかわらず、子どもたちの誰もが、自らの意欲と努力によって明るい未来をつかみ取ることができるような社会の実現が可能となると思われます。現在の生まれてくる子どもの保育・教育にかかる精神的、経済的な負担が、出生率の低下の大きな原因となっています。子どもたちこそ、この国の未来そのものであります。子ども達が平等に教育を受ける機会の保障は、わが国の将来にとって重要なテーマです。若いカップルが子どもを産みたい、育てたいと思えるような社会の実現こそが、出生率の上昇につながります。
児童扶養手当の増額、給付型奨学金の創設を進める中で、ひとり親家庭の大学進学率は24%から42%に上昇し、悪化を続けてきた子どもの相対的貧困率も、初めて減少に転じ、改善してきています。平成5年以来、一貫して増加していた現役世代の生活保護世帯も、減少してきています。5年間で53万人分の保育の受け皿を整備した結果、昨年の待機児童は6千人減少し、10年ぶりに2万人を下回っています。子育て世代の女性就業率は7ポイント上昇し、新たに200万人の女性が就業しており、М字カーブは解消してきています。
2013年3月に第2次安倍内閣の少子化対策・子育て支援の内閣官房参与に就任し、森まさ子、有村治子大臣らの御支援を受けながら、わが国の少子化対策に微力ながら携わってきました。6年前の就任当時と異なり、明らかに保育の環境整備、女性や高齢者の活躍の機会は増えてきました。しかし、希望出生率1.8を実現するためには、まだまだ越えなければならないハードルはいくつもあります。少子化対策は、わが国の喫緊かつ最大の課題です。政策の問題点や課題だけを指摘するのではなく、より良き制度の確立を目指して、国民の一人一人が、次世代の子ども達が未来に向かって大きく羽ばたけるような社会を創り上げていく覚悟が必要となります。
(吉村 やすのり)