選択的シングルマザーとは、結婚せずに自分の子どもを持つことです。自立した経済力を持つ女性が増えたことや、生殖医療の進歩が背景にあります。同じ生き方を選んだ人たちの交流も盛んになっています。しかし、法律婚した後に離婚・死別したシングルマザーに比べ、結婚歴のない未婚のひとり親は、行政上の配慮を受けにくい状況にあります。選択的シングルマザーが注目される背景には、家族形態の多様化や、働く女性の増加による選択肢の広がりがあります。
総務省統計研修所の西文彦教授が国勢調査から集計したところ、未婚のシングルマザーは、2015年で約17万7千人に達しています。2000年の約6万3千人から3倍近くに増えています。経済的に困窮する母子も少なくありません。国の調査では、未婚の母子家庭の平均就労収入は177万円で、母子家庭全般の200万円を大きく下回っています。未婚の母子家庭は、死別・離別のひとり親に適用される寡婦控除を受けられないなど、税控除や行政の助成の対象から外れています。伝統的な家族観を重視する立場から、結婚をしないで子どもを産むべきではないとの批判も強いものがあります。日本は欧米に比べ、結婚・出産をセットと捉える風潮が根強いものがあります。それぞれの生き方を尊重して応援する社会を目指すべきです。
(2019年1月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)