わが国における親権のあり方

法務省は、離婚後に父母の双方に親権が残る共同親権制度の導入を検討しています。現在の民法は、父母のいずれか一方が離婚後の親権を持つ単独親権を規定していますが、共同親権も選べるようにし、両方の親が子育てに関わりやすくするのが狙いです。日本は、先進国でも例外的に単独親権を採用しています。現行制度では、親権を持たない親は戸籍上の他人となり、子どもとの面会交流が大きく制限されます。
共同親権の考え方は、子の利益を重視する点にあります。日本では養育費や面会交流の方法などを合意せずに離婚することができるため、子どもの福祉に反するとの意見があります。離婚後も父母の双方が子どもの監護・教育の責任を負うべきだとの考えで、欧米などの国々ではこうした価値観に基づき、父母の双方が離婚後も共同で親権を持つのが主流です。しかし、父母の関係が良好でない場合、親権の行使をめぐって双方が激しく対立し、子どもの利益を害することもあります。配偶者からの暴力から逃げるため、一刻も早く離婚したいという深刻なケースもあり、両親の間を行き来することで、子どもが逆に精神的に不安定になるなどの症例も報告されています。選択的な共同親権を導入するには、親権の決定に裁判所が深く関与する手続きを構築することが必要になります。

(2019年2月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)

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