抗がん剤の中止の判断

がんは早期なら手術などで治せることが多く、手術後に抗がん剤を使って根治の可能性を高めることもできます。一方、様々な部位への転移や再発が起きると、多くの場合根治治療はありません。延命や症状緩和のため抗がん剤が使用されますが、再発・進行したがんでは、主ながん治療の一つ抗がん剤により一部を除いて治癒させることは難しく効かなくなるときが訪れます。しかし、抗がん剤中止の判断は難しいものがあります。
再発・進行がんへの抗がん剤治療は、科学的根拠に基づき診療指針で推奨される治療(標準治療)が最善となります。最も効果が期待できる薬から使い、効かなくなれば次に変えます。しかし、使える薬がなくなったり、副作用の害が勝ったりする段階が通常は、体の状態が悪化する前に訪れます。再発・進行がんに対し、生存期間を延ばす効果が示された薬は増え続けています。しかし、進行がんや再発がんは根治は難しく、患者に過剰な期待を持たせるべきではありません。こうした技術の進化が中止の判断をさらに難しくしています。治すことが困難ながんに、いつまで積極的な治療を続けるかが大きな問題となっています。厚生労働省研究班は、抗がん剤をやめるかどうか、患者の意思決定を手助けするプログラムの開発を進めています。

 

(2019年2月22日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)

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