文部科学省などの調査によれば、近年120万人前後で推移していた18歳人口は、2018年を境に減少期に入り、2040年には88万人に落ち込む見通しです。一方、全国の大学は2018年5月現在782校で、平成元年からの30年間で約280校増えています。既に私大の約4割は定員割れとなっています。令和時代に地方大学を取り巻く環境は、いっそう厳しさを増してくると思われます。
1980年代から1990年代にかけて、地方自治体は大学の誘致合戦を繰り広げました。街が活性化するはずとの期待感からでしたが、少子化に加えて若者の根強い東京志向もあり、地方大学は淘汰の時代を迎えています。大学は地方活性化の起爆剤である前に、重要な学びの場です。経営悪化で教育レベルの低下などが生じないようにすることが大切です。
政府は、2018年度から原則10年間、東京23区にある大学の定員増加を法律で禁じています。若者の東京一極集中に歯止めが掛からないとする全国知事会の要望を受けたもので、国主導で地方に学生を誘導するものです。この定員増の抑制は、学生の地方への誘導に一定の効果があると思われます。しかし、日本の大学全体の競争力を底上げすることが重要です。
(2019年4月25日 読売新聞)
(吉村 やすのり)