令和の日本は少子高齢化が一段と進みます。年金、医療など高齢者を支える現役世代の負担はどんどん重くなり、経済や社会の活力が損なわれることになってしまいます。65歳以上の高齢者人口は、ピークを迎える2040年頃に4千万人近くになり、日本人のほぼ3人に1人を占めるようになります。医療や介護など社会保障給付費は、2018年度の1.6倍の190兆円にも達してしまいます。日本の年金や医療、介護は、現役世代のお金で高齢世代への給付を支える仕送り型が基本です。今は18~64歳の現役世代2.1人で65歳以上の1人を支えています。しかし、2040年度には、現役1.5人で1人の高齢者を肩車のような状態になってしまいます。
取り得る対策の一つは消費税率を一段と引き上げることです。増え続ける費用を現役世代の保険料で賄うのではなく、高齢者も含む社会全体で広く薄く負担することが必要になります。消費増税の収入を社会保障財源にすれば、保険料のアップを少しでも抑えることができます。しかし、増税だけでは日本の少子高齢化は乗り越えられそうにありません。日本の財政健全化に必要な消費税率は、26%との試算もあります。税率がどんどん上がれば、子育て世代など現役世代の負担がやはり重くなってきます。支える側と支えられる側を年齢で線引きするのをやめることも必要になります。65歳を超えても元気で働く人が増えれば、社会で支える必要がある弱者は減り、かわりに社会保障の支え手が増えることになります。
可能な限り利用者に自己負担を促し、支出を抑えて負担の適正化を図りながら、税と社会保険料の厚みを増すことが必要になります。これまでの高齢者に手厚いシルバー民主主義の失敗を一日も早く是正しなければなりません。現役世代が、その時代の支出の柱を担うという方式が成立しなくなった現代では、世代をまたいで負担を公平にする長期的な制度設計が不可欠になります。目先の選挙結果に左右される政治からは脱却し、将来世代の声を政策に反映させるような政策転換が望まれます。社会保障における少数者は、先送りされたツケを負う将来世代です。日本の未来を考える時、彼らが最大のステークホルダーになります。
(2019年5月3日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)