大腸がんの治療成績

全国がんセンター協議会の4月発表の調査によれば、大腸がんの5年相対生存率は、リンパ節に転移がないと約9割に達しています。早期発見し、切除すれば大腸がんは根治できます。一方、リンパ節や、肺など遠方の臓器に転移し、手術が難しい場合は、抗がん剤による治療が選択肢になります。従来の抗がん剤に加え、2000年頃にがん細胞に目立つ遺伝子異常を目印に作用する分標的薬が登場しています。分子標的薬が有効か調べるため、細胞増殖に関係するRASという遺伝子の異常検査が公的医療保険で受けられるようになっています。
大腸の左右どちらにがんができるかで、予後に違いが出ます。大腸は、体の右側にある盲腸から上行結腸や横行結腸などを経て左側に回り込み、直腸、肛門につながります。一般的に右側が左側より治療経過が悪いとされています。最近になって同じ分子標的薬でも左右で治療成績が異なることが確認されています。また、細胞増殖に関係するBRAFという遺伝子に変異があると、薬が効きにくいことが判明しています。左右の特徴の違いは、両者の起源の違いや、発がんから転移に関係する多段階の遺伝子の異常が左右で異なることによります。
遺伝性大腸がんであるリンチ症候群は、国内の大腸がんの約5%を占めるとされ、50歳未満で発症することが多くなっています。家族歴などから疑われる場合、未発症でも定期的な検査が必要となります。リンチ症候群の大腸がんは右側発症が多く、ほとんどの場合BRAF遺伝子に変異がありません。

 

(2019年5月16日 毎日新聞)
(吉村 やすのり)

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