わが国におけるロストジェネレーションは、1990年代のバブル崩壊以降の就職氷河期に社会に出た世代をいいます。概ね団塊ジュニアと呼ばれる世代や第二次ベビーブームといわれる大きな人口の膨らみを含んでいます。この世代を不安定雇用に追い込み、加えて非婚化が進んだことで、第3次ベビーブームは起きませんでした。
国内の婚姻件数は、ほぼロスジェネの親に当たる団塊世代が25歳前後だった1970~1974年にかけ、年間100万組を超えていました。それが右肩下がりとなり、2017年には半分近い60万組に減ってしまいました。50歳まで結婚したことのない生涯未婚率は、2015年の国勢調査をもとにした分析では、男性で約4人に1人、女性で約7人に1人になっています。
昭和の日本では、非正規雇用の女性も結婚することで家族に吸収されていました。今は1人で生きなければいけない女性が増えており、結婚せずに老いていく現実を突きつけられていることになります。この世代が年を重ねて高齢単身者が増えることにより、社会的孤立が深刻化することになります。つまり、少子化と同時に単身世帯が増加します。男性は正社員のルートから外れたら、女性は正社員と結婚できなかったら、将来が描けない状況にあります。ロスジェネの親の世代までは、配偶者や子が介護などの面倒をみていましたが、これからは頼れる人がいないまま高齢になる人が増えていきます。
懸念されるのが、仕事や社会参加をせずに孤立するひきこもりです。40~64歳の中高年ひきこもりが、全国に約61万人いると推計されています。中高年のひきこもりが社会問題として注目される背景には、人口規模の大きいロスジェネ世代が30代後半から40代後半にさしかかっています。長くひきこもる40~50代の子どもを、70~80代の親が支えています。いわゆる7040問題、8050問題です。
団塊の世代が75歳以上になる2025年問題はよく知られています。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、65歳以上人口が最も多くなるのは2042年、75歳以上人口のピークは2054年です。ロスジェネが超高齢社会の主役となる時期と重なります。ロスジェネ世代の高齢化は、この国に大きな重荷を背負わせることになります。
(2019年5月27日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)