妊婦が感染することで、赤ちゃんに目や耳の障害や発達の遅れなどが出る先天性トキソプラズマ症やサイトメガロウイルス感染症が発症します。トキソプラズマは寄生虫の一種で、ネコのフンを通じて広がり、豚や馬、牛、鳥などに寄生します。生や十分加熱していない肉を食べたり、土いじりしたりすることで人にも感染します。予防には、ガーデニングなどの際は手袋をつけ、土に触った後は手をよく洗う、ネコのフンの処理は避ける、生肉を食べない、焼き物や揚げ物の肉でも食べる前に内部まで十分火が通っているか確認することが必要です。
成人が感染しても、首のリンパ節が腫れる程度で、症状はあまり出ませんが、注意が必要なのは、妊娠中に初めて感染するケースです。胎盤を通じておなかの赤ちゃんにうつり、視力障害や発達の遅れなどを起こすほか、流産や死産になる恐れもあります。昨年8月、スピラマイシンが治療薬として初めて公的医療保険の適用となりました。妊娠中に感染したことが分かった後から出産まで飲み続けます。海外の研究では、この薬をのむと、のまない場合と比べ、重症のトキソプラズマ症の赤ちゃんを7分の1に抑えられたとされています。
先天性サイトメガロウイルス感染症も、妊娠中に感染すると赤ちゃんへの影響が懸念される病気です。サイトメガロウイルスは、唾液や尿などを通じて多くが子どものうちに感染します。妊娠中でなければ感染しても問題はありませんが、妊婦の場合、赤ちゃんに難聴や発達の遅れ、肝機能障害、小頭症などの症状が出ることあります。乳幼児から感染する場合が多く、上の子どもと食器を共有したり、食べ残しを食べたりして感染します。昨年1月、生まれた赤ちゃんが、このウイルスに感染しているか調べる検査が、公的医療保険の適用になりました。
(2019年5月29日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)