高血圧や糖尿病などの慢性疾患を抱えた高齢者は、熱中症弱者ともいわれます。熱中症は、暑い環境で体内の水分などのバランスが崩れることで、脱水と体温上昇によって起こる目まいや頭痛、意識障害などの症状を示します。屋外で運動や肉体労働をして起こる労作性と、屋内で発症する非労作性に分けられ、後者の患者層は主に高齢者です。2018年は、熱中症で9万5千人が救急搬送され、うち半数は65歳以上でした。老化により体内水分量が減って汗をかきにくく、基礎代謝が落ちて暑さに鈍感になることが一因です。
高血圧や糖尿病を抱える人は特に注意が必要です。高血圧患者は塩分量の制限を受けていますが、汗をかいて塩分濃度が下がり過ぎると体温調節がうまくいかなくなります。体内に熱がこもると、熱中症を引き起こしてしまいます。糖尿病患者が使う薬の中には利尿作用を促すものもあり、脱水症状を招くリスクが高まります。熱中症の予防のためには、まず暑い環境を避けることが重要です。室内はエアコンをつけるなど涼しい環境を維持し、暑い時に外に出るのを控えるだけでリスクの低減につながります。
体重や体温、血圧などを毎朝測り、体重が減っていたら、脱水の可能性があるため、普段より多く水分をとるなどこまめな体調管理も予防につながります。卵豆腐や野菜スープなど、食事から水分を取れるように工夫することも有効です。
(2019年5月29日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)