高齢妊娠・出産の問題点

日本産科婦人科学会では、35歳以上の初めての妊娠・出産を高年初産(いわゆる高齢出産)と定義しています。厚生労働省の人口動態調査によると、2017年に出産した女性の約2割が高年初産です。第2子以降も含めると、35歳以上で出産した女性の割合は1995年には9.5%だったのに対し、2017年には28.6%と、20年あまりで約3倍になっています。
出生数は減っているのに、高齢での出産が増えた背景には、女性の社会進出と晩婚化の進展があります。女性の平均初婚年齢は、1995年に26.3歳だったのが2017年は29.4歳になっています。また、平均初産年齢は1995年が27.5歳、2017年は30.7歳で、20年で平均して約3年、晩婚化、晩産化が進みました。もう一つ、高齢出産が増えている背景には、医学の進歩があります。日本では、高齢出産が増えても安全に出産できる環境が整っており、国際的に見ても非常に低い新生児死亡率を維持しています。
妊娠初期に多いトラブルは、流産です。35~40歳の妊婦さんの流産率は、35歳未満の約2倍、40歳以上になると2.4倍にのぼります。また、妊娠高血圧症候群、妊娠糖尿病になるリスクも、妊婦さんの年齢が上がるほど高くなります。さらに、胎盤が正常より低い位置に付着して子宮の出口を覆ってしまう前置胎盤や胎児が子宮内にいる時に子宮からはがれる常位胎盤早期剥離なども起こりやすくなります。こうした合併症の増加に加え、陣痛が弱い、産道が硬く開きにくいなどの理由で難産になりやすいため、帝王切開率や産褥出血の頻度も上昇します。

(Anetis 2019 summer)
(吉村 やすのり)

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