東京医科歯科大学の研究グループは、iPS細胞を使い、肝炎の状態を再現したミニ肝臓を作製しました。研究グループは、人間のiPS細胞を元に、複数の細胞からなり、臓器特有の働きを持った直径0.2㎜の「ミニ肝臓」の作製に成功しました。炎症などを引き起こす肝星細胞やクッパー細胞という細胞も一緒に作ることで、肝臓に脂肪がたまって炎症を起こす非アルコール性脂肪肝炎であるNASH(ナッシュ)の病態を再現しました。
NASHは、飲酒の習慣がなくても発症します。患者は近年増加しており、国内に数百万人いると推定されています。進行すると肝硬変や肝がんにつながるおそれもありますが、発症の仕組みはわかっていないことが多く、有効な治療法はありません。今回のミニ肝臓の作製により、体内に近い状態を外部で観察でき、病気の仕組みの解明や治療薬探しに生かせると期待されています。
(2019年5月31日 朝日新聞)
(吉村 やすのり)