健康経営とは、企業が従業員の健康維持・増進に積極的に関わることで、生産性や企業イメージの向上、医療費抑制を図ることをいいます。政府が働き方改革を進めています。健康経営銘柄は、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を、東京証券取引所の上場企業の中から選定されます。優れた健康経営に取り組む例を、魅力ある企業として紹介、社会的にも評価されています。
経済産業省が健康経営度調査を実施し、経営理念・方針、組織体制、制度・施策実行、評価・改善、法令順守・リスクマネジメントの5つのポイントから、健康経営の実践度合いを評価し、企業を選出しています。財務指標のスクリーニングを経て、2018年度は37社が健康経営銘柄2019に決まっています。
生活習慣病予備軍への特定保健指導以外の保健指導、健康保持・増進やメンタルヘルスに関する教育への参加率、女性の健康保持・増進に向けた取り組みも選定要件に加わっています。健康経営への取り組みは、企業の株価など投資方面での評価にも直結します。健康経営銘柄に選んだ企業の平均株価は東証株価指数(TOPIX)を上回るなど、健康経営銘柄の株価は堅調です。まさに、健康な従業員こそが、収益性の高い会社をつくることにつながっています。
経済産業省の調査によると、組織・体制なども含め、健康経営の施策の評価・改善を行っている企業は8割強にのぼっています。しかし、いくら制度が整備されても、実効性が伴わなければ意味がありません。社員の健康を守るためには、最終的には、本人の自覚と家族の支援が欠かせません。社員の健康を増進しながら業績改善や経済成長も図るためには、従来の健康経営の取り組みだけでなく、社員一人ひとりの意識改革が大切となります。
(2019年6月6日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)