厚生労働省の報告書によれば、2016年度の1人あたり医療費を都道府県別にみると、福岡県が64.6万円に上る一方、新潟県は47.1万円にとどまっており、地域格差があることがわかりました。最も高かったのは、福岡県の64万6,488円で、高知県の64万1,114円が続いています。上位10道県のうち、九州が6県、中国・四国が3県を占めています。西日本で医療費が膨らみがちな傾向が鮮明です。一方、最も低いのは新潟県の47万1,857円で、福岡県の約7割でした。2番目に低いのが岩手県で、千葉県が続いています。
人口構成や住民の健康に関する意識など、医療費の地域差には様々な要因が絡んでいます。中でも、入院に必要な病床数と高齢者の受診率、入院日数の長さは医療費の地域差に大きく影響します。福岡、高知両県をみると、こうした傾向が読み取れます。一方、医療費が低い地域をみると、供給される医療が少ない状況が伺えます。新潟や岩手は医療を提供する医師が少ないうえ、民間病院も少なく、公立病院で地域医療を支えてきています。医療費の膨張抑制は重要ですが、住民が安心して医療費を受けられる環境との両立が欠かせません。
(2019年6月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)