細胞から人工的に高機能な臓器を作る成果が相次いでいます。横浜市立大学は、ミニ肝臓を作りマウスの体内で働くことを確認、秋にも人に移植する臨床研究を申請します。京都大学は、難しいとされてきたミニ腎臓をマウスの体内で機能させることに成功しました。 細胞を立体的に培養して作るミニ臓器は、ドナー不足が続く臓器移植に代わる未来技術として研究開発が進んでいます。
横浜市立大学のチームは、肝臓や血管の元になる細胞を特殊な培養液で一緒に培養したことで、初めて本物のように血管が通っているミニ肝臓を作製しました。マウスに移植して機能を確認し、人への移植に使えるメドがたったため、臨床研究に乗り出します。臨床研究計画が承認され次第、ミニ肝臓を代謝などができない肝臓病の子どもに移植する予定です。京都大学iPS細胞研究所のチームは、ヒトのiPS細胞から腎臓の元となる細胞を作り、腎臓組織の一部を作ることに成功しました。大きさ2~3㎜程度の組織をマウスに移植して、血管と組織がつながり、尿を作る様子も確認しています。
一方、欧米では、創薬や薬選択などにミニ臓器を使う臨床研究が動き出しています。米国では肺の難病患者から作ったミニ肺に薬を投与して、その患者に効果のありそうな薬を選んでいます。フランスやスイスでは、がん患者からミニ臓器を作り、抗がん剤を選択する臨床試験が進んでいます。同様な治験は欧米を中心に40件近く実施されています。
(2019年6月17日 日本経済新聞)
(吉村 やすのり)